なんとなく立ち寄ったスバルのディーラーで僕は圧倒されてしまった。 道路側の壁は全てガラス張りでフロアは真っ白なタイル、コインなしでコーヒーが出てくる自動販売機、ふかふかのソファ、背の高い観葉植物、そして清潔なシャツを着て忙しなく動き続けるスタッフ。
そうか、こんな世界があったのか、と、急いで車の契約書にサインし、部屋に戻り、Macintoshを開き、Google Mapsの検索窓に「Auto Center」と打ち込み、最初に目についたピンをクリックして、ストリートビューを起動させた。
僕がずっと見過ごしてきた「それ」は、つまりアメリカの本体だった。
「信号の手前で側道に入り東に向かう。すぐ隣にハイウェイが走っている。オースティンへ向かう車が道を急いでいる。」
「今日は来客の予定が3件入っている。2人は顔馴染みで、1人は新規の客だ。」
「俺は毎日ここで車を売っている。」
カラリと乾いたアメリカの郊外を、よなよなGoogleストリートビューで旅する京都在住の和井内洋介さんの作品集。テーマはカーディーラー。だだっ広い敷地にセダンやSUVがずらりと並び、マクドナルドのポールサインが地面に突き刺さる。ニューカラー的な風景の中に潜む、決定的瞬間を探し出してスクショで切り取る。ストリートビュー・フォトグラファーが描く郊外路上文学、ここに爆誕です。
21×15cm 128ページ