



写真家・山谷佑介(Yusuke Yamatani)が野湯と呼ばれる、自然の中で自噴する未整備の温泉巡りを基に続けているシリーズをまとめた写真集。
荒涼とした風景、山、地表、硫黄、噴煙、そこに佇む人や肌に加え、道中の車窓や食事、そして同行者が撮影した写真も織り交ぜながら、13万文字にも及ぶ旅の中で交わされた会話のテキストが繰り返し挿入されています。
山谷は自然の造形美だけではなく、SNSを使い偶発的に集まった見知らぬもの同士のプリミティブなコミュニケーションを通して、いつの時代も変わらない人間の営みに焦点を当てています。c探しという探検は、時代や場所を超えた記憶、すなわち《それはかつてあった》風景を探る試みなのです。
自分のSNSで野湯探しの同行者を募ると毎回何人か連絡をくれる。……面識のない人たち同士の、半ば強制的なコミュニケーションが始まる。自分を知ってもらう為の自己紹介、振る舞い方。たわいもない話を繰り広げていく中での、相手を知るための質問と若干の駆け引き。探検が始まる高揚感と非日常への期待感。そして共通の目的を持った連帯感。そこで生まれるグルーヴは、時代や場所を超えて、《それはかつてあった》風景を呼び起こしてくれる。(本書あとがきより)
223×148mm 320ページ
ソフトカバー